KOYA(マニラで子供らと遊ぶ)

庶民エリアにコミュニティスペースを作ってみた。

人間は1人では幸せになれない。

なんか格言みたいなタイトルをつけてしまったが、中年になりこういう思いは確信に変わってきている。例えば人々が憧れるような高級な食事をしても豪華な家に住んでもそれが1人だと楽しめない。そして自分の為にカネを使うことで得られる満足度はそれなりに頭打ちになりやすく、中高年ともなれば若い頃ほど物欲自体もなくなりその傾向は強くなる。『カネで幸せを買う方法』というTED talkがあったがそれによると『他人のためにカネを使うこと』がその答えだそうだ。そういうイメージは以前から持ってはいたが少しずつ利他的に行動するようになってそれが体感として分かるようになってきた気がする。

交渉する場合でも出来るだけ互いにプラスになる提案をするようにしているし、場合によってはこちら側の方が譲歩することで信頼を勝ち取ってその後を快適に過ごすということを戦略にしている。相手が単に利益を得てラッキーだと思うようなタイプなら次第に距離をおいていけばいい。信頼し与えみたいなことを繰り返し、信頼に応えてくれる信頼できる人と関係を保つことで徐々に周囲に信頼できる人が増えていく。それは騙されることが少なくない外国においては小さくない力と安心感につながる。

少し具体的な話をする。

 

僕が住んでいるのはフィリピン人の家の"はなれ"。つまり同じ敷地内に大家さんの家と中庭を挟んで小さな家がありそっちを借りている。『どうやってそういう借家を見つけたの?』とよく言われる。それは僕がオンライン英会話をしていた時にマニラで住む場所を探していてそこで英会話教師に紹介してもらった同僚教師が今の大家さん。

 

あまり普段は言わないが、当時大家さんの家族は安全なサブディビジョン(やや高級な団地のようなもの)に住んでいて、やや経済的に厳しい状況にあった。約2ヶ月前に死んでしまった旦那さん(旧大家さん)は糖尿病などの持病および高齢ということもあり働いていない状況で子供は5人で内4人は学生。それを旧大家さんの奥さん(現大家さん)がオンライン英会話の教師をすることで生活を支えていた。

 

不動産は相続の関係で手に入れずっと住んでいたようだが、自分の家の敷地内にある"はなれ"、しかも廃墟状態となっている家を借りてもらうのは難しいようだった。リフォームすれば住めるがそのおカネがない。という状態。僕は下見させてもらい『このままで住むのはキツイなぁ』と正気なところ思った。だがその後にその家の状況を聞いて少し同情するような感情も生まれたし、それと同時に『別にリフォーム代を建て替えてシャワー室とかしても別に家賃から相殺して返済してもらえればリスクはそんなに高くない』と思ったので、『無利子・無担保・家賃の半分は返済』というのを提案し、喜んで受け入れてもらった。

 

それから約11年住んでいる。今では次男と三男が独立し、残すは大学をもうすぐ卒業する4男と高校と大学の間??くらいの長女のみ。経済状況はだいぶ安定してきていると思う。その間も、水道が数日止まる(経済事情により水道が止められ、給水車で配送してもらう)といったことや、水圧が弱くシャワーがつかえず加圧ポンプを導入するなどで話し合いをして少し揉めたりしたこともあるが(主に旧大家さんは高齢男性で頑固、現大家さんはその奥さんで話がわかる人)、、、それら今は解決している。

子供らの誕生パーティーにも呼んでもらうし、僕も日本食なんかを作って参加したり、食事をおすそ分けするような関係。借家とはいえイメージとしては『スープが冷めない距離』に住んでいる二世帯住宅のような感じ。子供らは小さな頃からみているので感覚としては『(自分の子供とはいないが)甥っ子や姪っ子のような』もの。そうやって小さな頃から互いに信頼できる関係を作ってきたことが今後生活する上でどれだけ力になるかと思うと大きいと思う。

 

僕はフィリピンをベースにした今の生活が気に入っているし、このままここで高齢者になっていく。その時には1人で出来ないことが増え『信頼できる人』が必要になる。例え10年働いてもらっているメイドさんがいたとしても自分の銀行通帳を預けるようなことはリスクが高くなかなか出来ない。なので資産は分散しコントロールしつつも、ポイント・ポイントではそういう信頼できる準家族を頼ろうと思う。また準家族のような状態なので僕もそれなりに支援もするだろうし。

 

おそらく、というか間違いなく日本は『中高年の孤独』が深刻な社会問題になる。僕はそれを見越して戦略的にコミュニティを作ってきた。なので準家族のような大家さんファミリーや、Little Japanという交流会、そしてKOYAというコミュニティ、プラスそれ以外の友達(それほどは多くない)、といった活動をユックリと広げることでそれなりに楽しい老後にできそうな気がする。

また高齢になった時に属するコミュニティは複数が望ましいことに加え、同世代のジジババコミュニティだと長生きすればするほど仲間が減っていく。なので世代が違うコミュニティっていうのは割と重要だろうと思う。

 

KOYAの子供たちなんか普通にカワイイし、頼ってくれる。高齢になったら体力が落ち一緒に遊ぶのはキツくなっていくかもしれないが、仕組みを作って経済および環境として支えてあげることは今より出来ていくと思う。逆にその子供らの中から信頼できる子が大人になり老後の買い物や雑用を引き受けてくれることと思う。バイト先としても高額ではないものの平均よりは良い状態なら悪くないと思う。