KOYA(マニラで子供らと遊ぶ)

庶民エリアにコミュニティスペースを作ってみた。

もしフィリピンの大統領なら。

僕はドゥテルテ大統領は決断が早くリーダーシップがあると思っている。ただ政策に関しては異論もある。今回は仮に自分が大統領なら何をするかを考えてみたい。あくまで思考実験のようなもの。僕はフィリピンの決断に賛成はしていないが決断を尊重してそれに従っている。


第一章 ◆新型コロナウイルスに対する認識。

A:感染拡大しはじめた場合に医療崩壊は避けられない。

フィリピンは元々から医師も看護師も少ないし感染症に対応した病院も少ない。庶民が大病した場合は死んでしまう国。それ自体は急にどうこうできるものではない。後でそれでも出来ることを書くが、前提として医療崩壊を覚悟する必要があると思う。

B:封じ込め戦略の難しさ。


都市封鎖による封じ込めは免疫ができないの上、封じ込めが出来ずに感染者が出続けた場合は封鎖を継続するしかなくなる。もしくは封鎖を解除した場合に感染者が再拡大するおそれがあり。それは危機を先延ばししたことにしかならない。

C:集団免疫のリスク。

封じ込めが難しいからといってイギリスのようにノーガード専門もリスクが高い。集団免疫というのは何千万人の感染および何十~何百万人の死者を覚悟することになる。老人が少ないという意味ではイギリスよりマシだがそれでも同じような戦略は危険。

D:都市封鎖のダメージ。

かといって都市封鎖を厳格にすると経済的なダメージが大きくなる。1ヶ月の封鎖で済む保証はなく、延長すればするほどダメージは大きくなる。また経済ダメージとは言っているが、途上国においては『経済と命は直結する』・・・お金がないから親の薬が買えないとか、仕事がなく食料もないから栄養失調になるとか、強盗をする。暴動に発展するといったことは考えられる。難しいのは中流以上にはその危うさがイマイチ伝わらない点。

 

 第二章 ◆経済と病気の被害をバランスさせる第3の道。

E:封鎖はエリアごとにする。感染度におうじて制限する。

マカティ市、タギグ市、といった具合。ただし広いケソン市などは2つに分けた方がいい。またその中でもエリアは分け、感染者の数に応じて、厳しさを調整する。


F:若者を中心にグループに分けて屋外の公共事業を爆進させる。

このウイルスの1つの特徴は若者は感染しても重篤化しにくい。なので30才未満を中心に30名ほどの労働者を集め、高速道路建設や地下鉄工事などを進める。そのサポートとして10名ほどを加え、建築の指導係(これだけはプロでないと務まらないから中年(40才未満)でも仕方ない)を5名ほど。合計50名前後で行動。

サポートは食事の準備や生活の世話。加えて各スタッフの健康チェックをする。

-- F2 : 風邪症状があった時、軽い場合は継続勤務(免疫獲得を目指す)、熱などがある場合は隔離して様子をみる。<風邪症状がある人は後の抗体検査の優先検査対象>

--F3:事業目的は渋滞がない内に工事を爆進させ、雇用を生む。また公共事業だけでなく、民間のコンド建設なども、屋外が中心の場合で人口密集がない場合は認める。年令は上に準じて基本的に若者。ただし症状の報告義務あり。


G:ハイリスクな業態は基本的に禁止。もしくは制限する。そのサジ加減はEで示した感じでエリアごとの感染者数で決める。例えば1週間新規の感染者がゼロだった場合には全て許可する、感染者数が10名~100名だと、ハイリスク禁止。飲食店の座席間隔はあけるとか、テイクアウトのみとか。5段階くらいに分ける。

H:勤務地、Eに従って、同じエリアのみ勤務可能。ただし隣接した2エリアが封じ込め成功した場合は、2エリア間の移動を段階的に認める。ジプニーの人数は減らすとか、職場の人数も人口密度を制限するとかする。また当面はプライベートな車移動は禁止(段階による)。バイクは可。


I:隔離するのはむしろ老人。

各地域ごとにホテルを借りて、ハイリスクに位置する老人を何ヶ所かに分けて隔離。
中年で糖尿病があるとか准ハイリスク層は、その施設で食事の提供などをする。

家庭内で高齢者を隔離できるような部屋がある人達は例外。基本的には大家族で生活して家庭内感染のリスクが高い高齢者向け。

外国人入国は当面禁止するので、ホテルは既に入ってる外国人の滞在用と、高齢者の各利用と分ける。これは隔離政策であると同時にホテルの経営支援の意味もある。加えて病院の近くには医療関係者用のホテルも用意する。それぞれは分ける。


第三章 ◆対感染症の方針。

J:感染症の専門家チームの力不足。

フィリピンDOHを見る限り、データの集約が遅い。これはマンパワーの不足もあるが、システムの問題も大きい(能力不足) データは戦略を練る上での肝であり、ある意味で医師や人工呼吸器より重要。日本や韓国に専門家の派遣もしくは遠隔での助言や指導を求める。

K:医療崩壊に備える。

--K1:感染者用の病院とそれ以外の病院に分ける。医師や看護師でも糖尿病があるなど感染した場合のリスクが高い人達は、一般病院で従事。若いもしくは中年でも健康な人が中心になって感染者用の病院に勤務。

--K2:人工呼吸器の導入・・・も大事だが、より大事になるのが、スタッフ用の感染防護グッズ。事前に使い方の指導を受ける。数に限りがある場合は中年の医師の着用を優先する。また感染者治療用の病院とは別に、重篤者を見守るだけの野戦病院的な施設も必要。ここは若い看護師が中心。換気などを重視。点滴などはするが呼吸困難などになった場合は諦める。酷いと思うかもしれないが、治療キャパを越えた場合はそうするしかない。これもトリアージの1つ。

--K3:医療サポート・・・若いスタッフを採用し、医療従事者の食事の準備などを行う。また近くのホテルまでの送迎なども行う。できるだけ医療従事者が業務に専念してもらえるように雑務を引き受ける。

L:検査の方針。

途上国なので検査キャパが少ないのは仕方がない。どういう人を検査し、どうやってキャパを増やすのかは専門家と相談。

M:風邪症状がある場合。
自宅で隔離ができる人達(主に中流以上)は自宅待機。そうでない場合家庭内感染の恐れがあるので各バランガイ内で隔離施設を用意する。重篤化リスクの少ない若者。熱などがなく元気な場合は、Fのチームに組み込む。Fの目的は経済活動をするのと同時にローリスク層だけ集めてその中での集団免疫の獲得を目指すことにある。


L:抗体検査の試験的導入。

--L1:このウイルスのワクチンができるまでは1年以上かかる。それが途上国の国民の多くに接種できるまではさらに1年以上かかるだろう。基本的には最初は副作用のリスクも高く量産体制が整うまでは高価。なので先進国から導入されていくだろう。

そしてウイルスとの戦いは長期戦になることが考えられ、むしろ後半で重要になってくるのはPCR検査よりも抗体検査であると僕は思う。

--L2:抗体検査は既に実用化されている。検査はIgMとLgGがあり、簡単にいえばIgMの方は感染初期に出来る弱い抗体で、感染中の参考になる(あくまで参考)、LgGの方はあとで出来る強い抗体。こっちが陽性だった場合は当面は再感染のリスクが少ない。あえてこれは『無敵の人(X)』とここでは呼ぶ。

--L3:抗体検査の体制が整った場合は、Fで風邪症状があって、それが完治した人から、抗体検査をする。陽性だった場合。Xと認定し証明書を発行し、今までと別扱いにする。

どういうことかというと・・・。感染リスクが極めて低いのだから、様々な業務に従事してもらえる。極端な話だが、新コロの感染症用病院の食事配膳係とか送迎係とか。ただし衣類などにウイルスが付着したりはするので消毒などの指導はする。

--L4:入国基準緩和。当面は外国人の入国を禁止するが、Xの場合、つまりLgGの抗体がある外国人は入国を認める。パスポートに証明書を添付する。

--L5:Xを中心に経済活動を増やし、稼ぎ、様々な費用を捻出できるようにする。


M:BCG予防接種の導入。

BCG予防接種歴と新コロの感染の広がりに逆相関があるとされ世界中で研究が進んでいる。まだエビデンスレベルは低い段階だが、予防接種が免疫力を強化するという報告も中にはある。またBCG予防接種自体は世界中で行われているので導入コストが高くないと思われる。

一般的には予防接種は長期になると効力が弱まるとされるので、大人に対して今から打って、免疫力が強化される可能性を信じて、研究も兼ねてい、いくつかのグループに打ってみる。1つは新コロ対応病院のスタッフ(別の同系統病院と比較)、1つは感染者が出たエリアの他の住人・・・といった具合。



第四章 ◆支援の方針。

N:配給および支援金。

バランガイによって配給の量が違い、配給に遅れが見られる。また政府からの支援金はなかなか届かない。

そこで基本方針として、国民への支援金はG-CASHで支払う。バランガイは住人の名簿を作成しつつ、住人へのG-CASH導入を順番に教えていく係になってもらう。

それに対して、配給を2つに分業する。名簿を元にコメや缶詰などをまとめて調達するのが軍に担当してもらう。軍により運ばれた物資を、分配する役割はバランガイに任せる。それにより、配給の透明化がはかれる。加えて名簿の作成は幼児の人数の把握にもつながり、それによって配給も粉ミルクや紙おむつなども出来るようになる。分業によりバランガイ単独でするより早く配給ができる。

O:電子マネーの活用。

送金は名簿ができしだいG-CASHで政府から直接国民に配られる。

またこれは迅速にくばる目的に加え、国家戦略として、キャッシュレスを実現するための布石でもある。フィリピンは国内外の送金が多く、多くの国民が高い送金手数料と膨大な時間を無駄にしている(業界の反発はあるだろうけど) また通貨は種類が多くジプニーのドライバーなどが運転中に金銭授受をするなど危険で面倒。なので国民に電子マネーを使う土壌ができれば、順次公共サービスも電子マネーに対応していくべきだと思う。


最後に。

新コロ対策に万能な策はない。途上国にとっては感染による健康被害もさることながら、経済ダメージによる二次被害も甚大だと思われる。加えて国民におカネを配るにしても通貨を刷りすぎれば通貨安により対外債務は増えたり、インフレになったり国民が苦しむ。残念だけどサンデル教授の『トロッコ問題』だと考えるしかない。正解はない。何を重視するかはそれぞれの倫理観や価値観の問題になる。

そんな中でいかに全体をバランスさせ、それを次に活かすのか自分なりに方法を考えてみたのが今回の記事。これが実際の政策に活かされることはないので思考実験と思ってもらえればいい。

また僕は僕で今のフィリピン政府の方針に従って自宅待機しつつ、隣の集落に送金して支援物資を配ってもらったりを続ける。政府の支援金が遅れるようならもう1回送金することになるだろう。庶民は疲弊してる。カネが尽き人は食料が尽き、困っている。

普段は借金がある人がいても『大変だねぇ』って思いつつスルーしていた僕も、ここまで緊急だと動かずにはいられない。友達とか知り合いだったりするので、既に10万円以上は使ったが、そのカネがなくても僕の生活は特に変わるものではない。だがP2000とかのおカネが今あることで彼らは食事を抜く回数をへらすことができ、子供にミルクを与えることができたりする。

おそらくは今まで一番、有意義なおカネの使い方だろうと思う。

ただ残念なのは限られた友人&知人しか支援できないところ。フィリピンという国家がこれから状況が少しでも好転してくれることを願わずにはいられない。